あれっ?入力したい漢字が出てこない。
WindowsパソコンのWordやExcelなどで地名や人名を入力している時に、入力したい漢字がどうしても入力候補に出てこないという壁にぶち当たることがあります。
漢字の異体字問題です。
漢字には異体字が存在するものがあります。
斎・斉・齋とか…
高・髙とか…
渡辺さんの邉・邊など…
同じ意味の漢字なのに、表記がたくさんあるって本当にややこしいですね!
異体字と呼ばれる漢字はだいたい入力するときに変換候補に出てきてくれますが、
「つじ」と文字を打ち込んで一点しんにょうの を入力しようとすると、なんと二点しんにょうの辻しか候補に出てきません!
どうして一点しんにょうの「つじ」が入力できないんだろう?
この記事では、そんな「漢字の異体字が入力できない」トラブルを解消する方法を検証します。
IMEパッドで手書き入力する方法
変換候補に出てこない異体字を入力したいときの手段としてIMEパッドで手書き入力を試してみる方法があります。
あもしくはAの文字を右クリック ⇒ IMEパッドをクリックします。
IMEパッドの手書き入力を試してみると候補には二点しんにょうの「辻」しか出てきませんが、その辻を右クリックして異体字の挿入と進めて行くと一点しんにょうの が表示されます。
一点しんにょうの「つじ」のほうが異体字なのか!
このようにして入力できますが、毎回IMEパッドで手書き入力するのは手間がかかるので、変換候補に表示されるように設定を変えることができます。
異体字を変換候補に挙げるように設定する方法
IMEの設定を変更しましょう。
あもしくはAの文字を右クリック ⇒ 設定をクリックします。
Microsoft IMEの画面の「全般」を選択します。
文字の種類と文字セットの部分で、「IVSを除く」になっていたら「すべて」を選択して完了です。
そのように設定すると、Wordで「つじ」と入力した時に変換候補の中に一点しんにょうの が [環境依存]として候補に挙がってくるので一発で入力しやすくなります。
スマートフォンでの異体字入力はできるか?
ではスマホ(Androidやiphone・ipad)ではどうなのか? 残念ながら一点しんにょうの は出てきてくれませんでした。
中国語の手書き入力を追加するなど他のサイトで解説されていた方法を試してみましたがダメでした。このブログでも一点しんにょうを表示させることができていませんが悪しからず。(phpを触るなど大変そうなためあきらめました。このブログではインライン画像で表示させているので、コピーすることはできません)
最終手段としては、一点しんにょうの を表示させているサイトを見つけてそれをユーザー辞書登録していけばなんとかできます。
まず一点しんにょうの をコピーしておいてから、一般⇒ユーザー辞書と進みます。
右上にある+ボタンで変換させたいワードを追加していきます。
「つじ」と入力すると候補に出るように登録しておきましょう。
なんとか一点しんにょうの「つじ」が表示されるようになって一件落着ですが、ブログ内で表示できるようにも勉強を重ねたいと思います。
一点しんにょうと二点しんにょう、両方あるのはなぜ?
さて一点しんにょうと二点しんにょうと混在して、どうしてこんな複雑な状況になってしまったのでしょう?
学友の辻くんと辻本さんは一点しんにょうだったはずだけどなぁ。
時代によって漢字の正式な形というのが変化してきたんですね。
今からはちょっと難しい歴史の話になります…
明治時代に学校教育で教える漢字の形の模範とされたのが、清の皇帝・康熙(こうき)帝の命によって西暦1716年に編纂された「康煕(こうき)字典」でした。
その辞典ではしんにょうが「二点しんにょう」に統一されていたのです。
それで明治政府は学校教育で二点しんにょうを取り入れて、戦前までしんにょうは二点で教えられました。
戦前までは、点2つ!
漢字の簡略化が進み1981年に「常用漢字表」が制定され、常用漢字は一点のしんにょうに統一されました。
1981年からは、点1つ!
ただ「一点しんにょう」は近代に始まった省略形かというと実はそうではありません。中国・唐の時代(西暦600~900年ころ)には一点しんにょうが正式な形とされていました。
中国 唐の時代は点1つ!
書道における楷書体は唐の文字形を手本としていましたから、二点しんにょうが制定される前から現代に至るまで書道では一点しんにょうで書いています。
また書道に関わりなく、手書きでは一点しんにょうを書くのが自然でした。
「常用漢字」では一点しんにょうに統一されましたが、「つじ」は国字なので「常用漢字表」に入らない「表外字」として扱われます。 そのため「つじ」は、一点でも二点でもどちらも正解であるという揺れが生じることになりました。
どちらも正解ではなく、どっちかにしてください。
印刷文字の字体に揺れが生じたままでは混乱が大きくなることから、2000年の国語審議会の答申「表外漢字字体表」で新たな基準が設けられました。「常用漢字表」以外の字形に二点しんにょうを採用したのです。
JISは2004年にこのことを受けて「つじ」を二点しんにょうに変更することにしました。それ以降二点しんにょうスタイルの「辻」が普及します。
もうややこしすぎでしょ。
2010年に新たに196字が追加された「新常用漢字表」が作成されました。しんにょうが含まれていた「遜」「遡」「謎」の3文字が「二点しんにょう」のまま新常用漢字表に追加されたのです。
「謎」すぎる。
「常用漢字は一点しんにょう」と統一してきたのにここに来て例外が作られてしまったのです。
こんな複雑な過程を経て、一点しんにょうと二点しんにょうが混在するようになりました。どちらが正しいというよりどちらも正しいということになるんでしょうね。
ただ全く同じ意味の漢字に複数の表記法があるとかなり面倒なものです。